大湯環状列石のご紹介
⼤湯環状列⽯(おおゆかんじょうれっせき)は、⽇本を代表する2つのストーンサークルで構成されています。
万座(まんざ)と野中堂(のなかどう)という、2つの環状列⽯を合わせたよび名が⼤湯環状列⽯です。環状列⽯とは、⽯を環状にならべた遺跡で、「ストーンサークル」ともよばれ、お墓やマツリのための特別な場所だったと考えられています。
ここでは⼤湯環状列⽯の⾒どころや成り⽴ち、遺跡の全体マップなどをご紹介します。
見どころ
万座(まんざ)・野中堂(のなかどう)
2つの環状列⽯と⽇時計状組⽯
⼤湯環状列⽯は⼤⼩の川原⽯を円形、楕円形、方形に組み合わせた複数の配⽯遺構によって2重の環が形成されています。⼤湯環状列⽯には、万座と野中堂の2つの環状列⽯があり、万座は100基以上、野中堂は60基以上の配⽯遺構からなっています。
10数個の⽯をならべた円形や四⾓のかたまりが、いくつも並べられ、この⼩さなかたまりのひとつひとつが、お墓だったようです。万座環状列⽯では約6500個、野中堂環状列⽯では約2000個の川の⽯が使われています。
野中堂環状列⽯の中⼼から万座環状列⽯の中⼼とそれぞれの日時計状組石とを結んだ線が夏⾄の⽇没⽅向と⼀致しています。当時の⼈々は太陽の動きを意識していたのでしょうか。
⾃然への感謝の祈りの跡
数々の遺構の発掘
環状列⽯のほかに、掘⽴柱建物跡、柱列などの遺構も⾒つかっています。いずれも環状列⽯の性格を考える上で重要で、⼀部は復元整備されています。
環状列⽯のまわりには、掘⽴柱建物や、⾷べものを⼊れておく貯蔵⽳などが⾒つかっています。同時に、⼟偶やキノコの形をした⼟製品など、⽇常では使わない道具もたくさん⾒つかりました。これらは家族が⻑く幸せでいることを願ったり、⾃然への感謝を表したりしていると考えられています。
⼤湯川沿いに位置し、
当時を体感できる広⼤な遺跡
⼤湯川には⾷料となるサケ・マスが遡上し、捕獲できる河川の近くであり、後背地には落葉広葉樹の森が広がっていました。遠くには、東に奥⽻⼭脈、⻄に⾼森⼭地の⼭並みが⾒えます。復元された掘⽴柱建物のほかに、現代の建物はひとつも⾒えず、縄⽂時代から続く大湯の大自然を体感することができます。できるだけ縄⽂時代当時の雰囲気を感じていただけるよう、⼤湯環状列⽯では遺跡の中に案内板などを設置していません。
⼈⼯の構造物から開放されたこの地で、歴史と⾃然に囲まれながらゆっくりとした時間の中で散策をすることで、あわただしい⽇常を忘れ縄⽂の息吹を感じることができることでしょう。
成り立ち
発掘作業
昭和6年(1931年)の発見以来、調査と保存活動が現在まで続いており、昭和31年(1956年)7月19日には特別史跡に指定されています。特に、環状列石の周辺で検出した掘立柱建物群は、その後の環状列石研究に大きな影響を与えるものでした。
環境整備
大湯環状列石では、昭和17年(1942年)から発掘調査が行われ、調査のたびに新しい成果を得てきました。現在では約25万平方メートルが特別史跡として指定されています。また、遺跡全体の環境整備と、来訪者への総合的な案内や体験学習が行えるよう、平成14年(2002年)には、大湯ストーンサークル館を建設し、遺跡周辺には、縄文時代の植生を再現した森「縄文の森」を整備しました。現在も、大きな2つの環状列石をはじめ、遺跡を身近に感じていただけるよう、日々環境の整備を行っております。
世界遺産
「北海道・北東北の縄文遺跡群」
北海道・北東北の
縄文遺跡群
北海道・北東北の縄文遺跡群は、1万年以上にわたり採集・漁労・狩猟により定住した人々の生活と精神文化を伝える文化遺産です。北海道・青森県・岩手県・秋田県に所在する17の遺跡で構成されています。北海道・北東北では、ブナ・クリなどの森林資源や暖流・寒流が交わる海域が育んだ水産資源を背景に定住がはじまりました。その後、環境変化にも対応しながら、採集・漁労・狩猟による生活が長期間継続しました。この間、土偶や環状列石などにみられるように、精緻で複雑な精神文化も育まれました。
特別史跡
現在日本の文化財保護法制の特徴のひとつに、文化財を2段階で指定・保護することがあげられます。記念物には、遺跡のほか名勝地や動物・植物・地質鉱物などが含まれます。
遺跡のうち重要なものが史跡に指定され、そのうち「学術上の価値が特に高く、我が国文化の象徴たるもの」が特別史跡に指定されます。史跡は現在、全国で1,881件あり、そのうちの63件が特別史跡に指定されています(令和5年3月1日現在)。いずれも教科書にも出てくる著名なものばかりです。
中でも縄文時代の特別史跡は全国でもわずか4例であり、大湯環状列石はそのうちの一つとなっています。
特別史跡
大湯環状列石が作られた時期は、縄文時代後期にあたります。
大湯環状列石は前期中盤以降から始まった気候の寒冷化と、「ムラ」の小規模化や分散化が進む中、「ムラ」同士の結び付きを強める役割を果たしました。「心の拠り所」となる大規模な共同祭祀場や共同墓地を複数の「ムラ」の人々が協力して作り、維持し続けたと考えられます。
大湯環状列石は、現代日本の精霊・祖霊・自然信仰に繋がる縄文の精神文化の変遷を垣間見ることができる、精神的にも重要な位置付けとなる遺跡です。
史跡マップ
特別史跡・ユネスコ世界遺産 | 大湯環状列石⼤湯ストーンサークル館
大湯ストーンサークル館は、特別史跡大湯環状列石のガイダンス施設です。
展示ホールでは、遺跡についての知識を深めていただくパネル展示のほか、発見された遺物がご覧いただけます。
このほか、勾玉ペンダントや土器などの手作り体験などができます。
入館無料、常設展有料。
館内案内
展示ホール
展示ホールでは、遺跡についての知識を深めていただくパネル展示のほか、発見された遺物がご覧いただけます。ガイドの解説付きでの見学もおすすめです。
縄文シネマ
3面パノラマスクリーンに映し出される映像と、5.1chサラウンドシステムによる、大迫力の映像で、大湯環状列石から縄文時代に想いを巡らせます。
ホログラム
土器や土偶、石器だけでなく、日時計状組石などをホログラム映像でお楽しみいただけます。
縄文時代の遺物・遺構を様々な角度からご覧いただけます。
体験工房
体験工房では、どばんくん(土版)などの土器づくり、組石マグネットづくり、勾玉づくり、などの体験が行えます。所要時間は30分〜60分程度です。
紹介映像
3つのポイント
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特徴的な出土品
大湯環状列石では、S字形の文様が入り組んで連続し、かつ、帯状のパターンの中に縄目模様がつけられた土器を始めとして、縄文の奥深さを感じられる展示がたくさんあります!
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豊富なガイダンス映像
大湯環状列石を実際に見に行く前に、入り口ホールに設置しているガイダンス映像をじっくり視聴いただくと、より理解を深めることができます。
ガイダンス映像は、
①大湯環状列石とは ~縄文精神文化の象徴~
②集落の芽⽣えから⼤湯環状列⽯が作られた時期へ
③⼟器と縄⽂⾷
④守られてきた遺跡(発⾒〜発掘調査〜活⽤)
⑤未来へむけて
の5篇が用意されています。 -
3画面特大スクリーンによる
「縄文シネマ」大湯環状列石の「万座ホール」では、”JOMON 大湯 ココロの旅”と題したシネマ映像を放映しております!
合計12K相当の高画質・大画面のスクリーンと、5.1サラウンドによる大迫力の映像で、縄文を体感してみませんか!?
みんなに愛される どばんくんを徹底検証
大湯環状列石(おおゆ かんじょうれっせき)では、縄文時代の様々な遺跡が出土されています。それらは生活必需品の土器などを指す「第一の道具」と、祭祀・マツリの道具と考えられている「第二の道具」とがあります。
第二の道具と考えられている『どばんくん』こと土版について見ていきましょう。
どばん(土版)とは何か?
ねん土で作った土製品(どせいひん)のうち、平らに形づくったものを土版(どばん)といいます。また、同じように石で作った平らな石製品を岩版(がんばん)といいます。これらは縄文(じょうもん)時代後期から晩(ばん)期の遺跡(いせき)から多く出土しています。
土版は環状列石(かんじょうれっせき)で何かの儀式(ぎしき)を行うときに使ったものと考えられます。
どばんくんプロフィール
- 出生地(出土場所)
- 野中堂環状列石 東側
- 年 齢
- 約3500歳
(紀元前1500年頃生まれ) - 身 長(縦幅)
- 58ミリメートル
- 胸 囲(横幅/厚さ)
- 37ミリメートル /
15ミリメートル - 体 重(重量)
- 48.39グラム
最新の研究結果
どばんくんには1から6までの数を数えていたのでは?と考えられる穴が開いています。
それぞれの穴の数え方は下のイラストの解説のとおりです。数を数える道具なのにかわいい見た目も兼ね備えているなんて、当時の人達はとってもセンスがよいですね。
そして、実はどばんくんの穴はもう一つ空いているのです。それは下の底部分。このことから実はどばんくんは女性を模しているのでは?という説もあります。そうなるとどばんくんではなく、どばんちゃんということになります。
どちらの性別でもどばんくんの可愛さに違いはありませんが、まだまだ謎が多いどばんくんです。
どばんくんは実はどばんちゃん?
下の底部分にも一つ穴が空いているので、
女性を模したものではないか?とも言われているそう。
はたして?
どばんくんの穴が貫通していた!?
大きな口がかわいい!のですが、実はこの穴、下部の穴まで貫通していることが最新の研究でわかりました。このことから、縄文人は、人体の構造を理解していたのではないか?と考えられています。
特別史跡・ユネスコ世界遺産 | 大湯環状列石⼤湯ストーンサークル館
開館時間
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◆通常期 4月1日〜10月31日
開館時間 9時〜18時
休 館 日 なし -
◆降雪期 11月1日〜3月31日
開館時間 9時〜16時
休 館 日 月曜日及び年末年始
※月曜日が祝祭日の場合:翌日以降の平日
入館料
- 入館料
- 無 料
展示ホール
- おとな
- 320円(団体:250円)
- こども
- 110円(団体:90円)
※団体料金は20名以上に適用
- 鹿角市教育委員会 大湯ストーンサークル館
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〒018-5421
秋田県鹿角市十和田大湯字万座45番地
TEL:0186-37-3822 FAX:0186-30-4303